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日本ベンチャー学会誌No.29 要旨

VENTURE REVIEW No.29
March 2017

研究論文 /Article

横山 恵子/後藤 祐一/金井 一賴
アカデミック・アントレプレナーシップの新展開

本研究は、技術と市場において、資源およびネットワークを有さずに起業した大学発ベンチャーのアントレプレナーシップについて、事例研究に基づき検討するものである。
近年、大学発ベンチャーや大学における企業家教育など、アカデミック・アントレプレナーに関する研究が蓄積されつつある。しかし、ゼロからの事業創造に関するアカデミック・アントレプレナーの具体的な思考・行動様式(アントレプレナーシップ)は解明されていない。
本研究は、技術ネットワークと市場ネットワークの形成とアカデミック・アントレプレナーシップに着目し分析を行った。分析の結果、次の2点について明らかにした。第1に、アカデミック・アントレプレナーシップの構成要素ならびに構成要素の関係性を明らかにし、アカデミック・アントレプレナーシップの構図を新たに提示した。第2に、その中でも技術と市場のネットワーキングの進展プロセスを明らかにしている。そして、これら明らかにした点とエフェクチュエーションとの類似点・相違点を考察し、新しい理論的含意とともにアントレプレナーシップ教育への実践的含意を導き出した。

キーワード:アカデミック・アントレプレナーシップ、大学発ベンチャー、エフェクチュエーション、ネットワーキング、アントレプレナーシップ教育

事例研究論文 /Case Study

高橋 勅徳/木川 大輔
創薬ベンチャーにおけるオーファンドラッグ戦略

医薬品の開発には、莫大な費用と長い年月を要するため、創薬ベンチャーは、製薬会社との提携によって当座の収益を得ながら研究開発を行うことが一般的である。しかし近年では、とりわけ米国を中心に、創薬ベンチャーがある程度のところまで研究を進めた後、製薬会社が当該ベンチャー企業を買収し、開発を続行するという分業が主流になっている。そして、買収された創薬ベンチャーの企業家は、連続起業家として、再度創薬ベンチャーを起業するといった起業の支配的経路が確立されつつある。しかし、支配的経路が確立されつつあるからこそ、多様なベンチャー企業の経路を捉え、考察することが企業家研究においては重要であると考える。そこで本稿では、制度的戦略の概念を用いて、創薬ベンチャーを考察する。考察を通じて、製薬・バイオ産業における新たな創薬ベンチャーの経路を明らかにする。

キーワード:創薬ベンチャー、支配的経路、制度的戦略、オーファンドラック戦略、製薬産業

品田 誠司
オープンソース・ハードウェアとユーザーイノベーション・プロセス

近年、ユーザーイノベーション研究の進展が進み、ユーザーが所属するコミュニティに関する研究はユーザーの属性や貢献動機といった分野の研究蓄積が進んでいる。だが、ユーザーイノベーションのプロセスの研究や企業とユーザーコミュニティの関係性、マネジメントに関する研究は、未だ十分ではない。本研究ではオープンソース・ハードウェアである携帯型放射線測定器の開発事例を通じて、上記の問題を明らかにした。その結果、第1にユーザーイノベーションのプロセスでは、コミュニティでの発言内容と発言タイミングが重要な役割を果たしていることが明らかにされた。第2に、オープンソース・ソフトウェアでのマネジメントで特徴的な「優しい独裁者」という統治システムが、オープンソース・ハードウェアでも採用されていることが確認された。

キーワード:ユーザーイノベーション、オープンソース・ハードウェア、イノベーション・コミュニティ、優しい独裁者

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