学会誌

M&Aを通じたイノベーションと成長

 成長企業が環境変化に適応し、イノベーションを継続するために内部のケイパビリティを変化させるに当たっては、M&Aは重要な手段である。特にイノベーションに不可欠な無形資産が企業内部の慣性や制度的な制約によって模倣不可能な場合には、M&Aによる獲得が有効である。
 政府の保護なしに個人の起業家らによりベンチャー企業として次々に創業され起業家精神の下で急成長を遂げた戦前の電力企業の事例を検討すると、次世代のイノベーションである水力発電技術による成長がM&Aを通じて実現されたことが分かる。
 これは、規模の経済や資本の獲得と共に、水利権という次世代技術に必要であり模倣不可能な無形資産の獲得を目的としたものであり、企業がダイナミックにケイパビリティを獲得し、イノベーションを目指すM&Aの例と言える。なお、公共政策の観点からは、M&Aのイノベーション促進と独占禁止政策の比較衡量の萌芽が見られる。

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