学会誌

米国ベンチャーキャピタルのパフォーマンスの実態

 本稿では、米国のベンチャーキャピタルの行動とパフォーマンスを個別ファンドに踏み込んで実証分析を試みた。米国のVCファンドで一般に言われる高い収益率はインターネットバブル期に限られたものであり、2001年以降は全体として収益率がマイナスとなっている。
 また、高いリターンを上げた一部のファンドがVCファンド全体の収益の大半を占めており、ファンド間で収益の偏りが大きい構造にあることが確認された。この偏在は、IPOやM&AによってVCが実現する売却額(投資先の企業価値)に大きな格差があるためであることが、投資モデルと史的分析により推定できる。さらに、好成績をあげたファンドは一流と評価されるVCファームに偏在し、その成績は次回以降も続く傾向がある。このような特定のVCが持つ競争力は、その実績、評価、ネットワークによって形成された可能性が高い。
 今後、VCファンドの収益の大幅な回復は期待しにくく、他方でVC以外からの資金調達で成長するベンチャーも存在感を高めているなど、米国のベンチャー投資は大きな転換点にある。

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