学会誌

知財の標準化における専門性と柔軟性

 工業中心社会から、さまざまな情報や知識を融合させていくことに価値基準が設定される知識社会へと重点が移行しつつある。本論文では無形の知財としての色彩の標準について、標準を獲得した結果・成果としての覇権と、そこへ至るまでの過程である制覇について考察している。
 本論文では、コミュニケーション概念と一般的な標準化に言及した後、デジタル機器類との特性の相違を明らかにする。続いて、色見本帳(色彩のコミュニケーションツール)による色彩標準での、ナショナル・スタンダードとしてのDICとグローバル・スタンダードとしてのPANTONEを対比し分析する。PANTONEは”色彩の標準を創造する”と標榜する、いわば色彩標準のスペシャリストである。単一の事業でシンプルなビジネスモデルはあるが、知財をベースとした今後の事業展開・発展の可能性も高い。色彩標準を制覇し覇権を手中にするために、事業ドメインを集中させた専門性と、既存事業に囚われない自在な柔軟性が標準化の成否の鍵となり、明確な戦略的意図が存在することを明らかにしている。

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