学会誌

新潟県米加工産業の分析

 農産品を素材とした加工ビジネスや、食料産業クラスターへの試みを定着させ、地域の雇用増に貢献する力強い事業(ないしはその集合)へと成長させることが求められている。新潟県の米加工産業は全国でも高いマーケットシェアを占めている、強い競争力を持った産業であるが、これは、小規模事業体が主流の伝統的な産業分野を基盤に、県立の技術指導機関によって意図的に育成された成功事例と捉えられ、地域資源活用型産業の形成モデルとして、他地域での試みに示唆を与えるものである。新潟県の米加工産業は、創出→高度化→展開というプロセスをたどって形成されたが、その過程では、ポーターのダイヤモンドモデルにおいて競争優位を生み出すとされる4要因のうち、要素条件(良質原料の調達・加工技術供給機関の存在・人材育成制度の存在)が強く働いたのが特徴的である。創出された多くの企業群からは、戦略的経営能力を備えたリーダー企業の輩出、フォロアー企業の成長が見られ、その中から、産官学連携の強化を探りつつ、技術開発に基づく高付加価値分野へと展開する動きが進んでいる。

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