学会誌

権限委譲の神話と現実

 近年エンパワーメントや権限委譲は、期待されていた成果を生みださないケースや、失敗することも少なくないとの研究報告がなされている。また、権限委譲が直接実績に影響するのではなく、モデレータ変数によって媒介されるとの先行研究もある。
 本研究は、中堅中小企業の組織に関する独自のアンケート調査のデータを基にして、「関係性エンパワーメント」、特に権限委譲が、どのような条件下で機能するのかについての実証研究を行った。具体的には、独立変数としての権限委譲が、いくつかのモデレータ変数、例えばコントロール活動、信条システム、サポート活動などの経営活動と共に、従属変数である挑戦意欲と財務業績などの成果に対して、どの程度の影響度合いを持つかを検討した。
 結果としては、権限委譲は結果変数(特に挑戦意欲)との間に部分的に相関関係があり、またモデレータ変数のレベルによって結果変数に影響を与える可能性が確認された。権限委譲とモデレータ変数との補完的な関係について、今後より多くの実証研究がなされることが望まれる。

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