学会誌

市民企業家による資金獲得プロセスの分析

 従来の企業家活動研究では、企業家のネットワーク、事業コンセプトと資金獲得との関係を解明する研究が一般的であった。
 本稿は、広島市立大学の学生と教員が中心となって推進したアートプロジェクトのスタートアッププロセスを対象としている。最初は小規模な地域プロジェクトとして始まったが、現在は多様な分野のアクターを巻き込みながら大型プロジェクトとして成長しつつある。
 本研究においては小規模で社会貢献的な要素をもつプロジェクトと一般的なビジネススタートアップの差異について考察している。本研究では1年以上にわたりアクションリサーチとインタビュー調査によってデータが収集された。事例分析の結果、プロジェクトへの資金提供の面において、社会企業家的プロジェクトと一般的なプロジェクトとの違いが認識されている。特に、従来の研究結果とは若干異なり、確固たる事業コンセプトは必ずしも必須条件ではないと結論づけている。つまり、資金確保した後に、プロジェクトのコンセプトや詳細な内容が確立されていく場合が存在する。
 今後の課題として、一般化をはかるために本研究の領域をさまざまな地域やフィールドに拡大していく必要性があると同時に、さらなる研究蓄積と定量研究の実施が望まれる。

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