学会誌

わが国の新規株式公開企業の質の変遷

 本稿では、近年のIPO市場の低迷を「企業の質」の視点から考察する。企業の質を実証的に計測することによって、幾つかの現象が確認された。第一に、IPO企業の質は上場時期によって異なっている。足許では、質の極めて高い企業しか上場できない事態に陥っている。第二に、どの新興市場にも同じような質の企業が上場しており、市場毎の特色は観察されない。第三に、業種によって上場のしやすさに格差がある。上場が容易な業種のなかから質の悪い企業が多数上場してきた可能性もある。第四に、上場後に急成長する企業には共通した特徴があるが、取引所や証券会社は、こうした急成長企業を上手く見出せていない。IPO市場の活性化のためには、証券取引所や証券会社の目利き能力の向上や、IPO企業と投資家の間の情報の非対称性を緩和させる取り組みも必要となろう。

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