学会誌

大学発ベンチャーか?技術移転か?

 現在、日本の大学発ベンチャーによる事業化は、成功しているとは言えない状況にある。本稿の目的は、コンピュータ黎明期における新技術の商用化に関する日米比較を通じて、日米におけるエコシステムの違いに着目し、その歴史的経緯を明らかにするものである。
 米国での大学発ベンチャーに関する最初の成功事例は、ミニ・コンピュータのディジタル・イクイップメント・コーポレーションである。同時期、日本では、通産省のイニシアティブによる電気試験所から大企業への技術移転を通じて、商用コンピュータが誕生した。
 当時、コンピュータは軍事技術の中核であった。敗戦国の日本では、大学を迂回する形で、新技術の商用化を支援するエコシステムが形成された。結果的に、新技術を商用化するときの主たる経路は、米国では、大学を主な拠点とする研究者による「大学発ベンチャー」、日本では、大企業への「技術移転」という違いが生じた。

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