学会誌

出身企業における破綻等の問題が起業家に与える影響に関する考察

 本稿では2001 年~2011 年に日本の株式市場に上場した新規公開企業の役員および創業者の出身企業を調査、出身企業の破綻等の問題イベントが起業の成功に影響を与えているかを検証した。
 その結果、『民事再生』、『清算』、『破産』、『私的整理』、『会社更生』など、俗に「倒産」と呼ばれるイベントが発生した企業から新規公開企業の役員が高い比率で輩出されていることが実証された。一方、『リストラ』、『合併』、『不祥事』、『持株会社移行』と役員輩出数の間には、負の相関が認められた。社齢の若い企業ほど、新規公開企業の役員を輩出する割合が高いことも確認された。
 創業者に関し、『会社更生』、『吸収合併』、『営業譲渡』、『民事再生』、『破産』という問題を経験した企業からより多くの創業者が輩出されていることも実証された。『合併』や『リストラ』を経験した企業では有意な差は認められなかった。問題企業の退出が企業の新陳代謝につながるという通説は概ね支持された。

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