学会誌

コーポレート・ベンチャーキャピタル投資は企業の目利き力を高めるか?


近年、事業会社によるVC投資、いわゆるCVC投資が学術的にも実践的にも注目を集めている。先行研究では、CVC投資が投資元の事業会社へ与えるベネフィットとして、主に投資を通じた技術やアイディアの模倣に焦点を当てた議論が行われてきた。これらの議論では、技術やアイディアの模倣が行い易い産業、すなわち特許による知的財産の保護が弱い産業においてのみ、CVC投資が事業会社のイノベーションや企業価値に影響を与えるという示唆が行われてきた。
それに対して本稿では、CVC投資が投資元の事業会社へもたらすベネフィットとして、先行研究で議論されてきたものとは異なるメカニズムに着目し検証をおこなった。検証結果からは、CVC投資を通じた情報の蓄積が、当該技術分野に対する不確実性を低減させる働きを持つという可能性が示唆された。この検証結果はまた、CVC投資を通じた大企業の企業価値向上と、ベンチャー企業との関係強化の両立が可能であることを示唆している。

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