学会誌

中小ファミリー企業の第二創業


長期的スパンで事業承継をおこなう中小ファミリー企業が存続するには、製品・プロセス次元の革新によって、業種内競争に勝ち残るだけでは不十分である。すなわち、「何を誰に売るのか」によって規定される「事業立地」の衰退に応じて、いずれ祖業からの「転地」を図ることがもとめられる。
後継者には一種の企業家活動である転地を実施することが期待されるが、本稿ではその観点から第二創業という概念の再定義を試み、探索的事例研究を通じて理論化を図る。分析の結果、第二創業の過程で生じた経営の構造転換は(1)オペレーション次元での「業務の再編」、(2)マネジメント次元での「経営層の(再)組織化」、(3)戦略次元での「事業の再編」、(4)見えざる資産に関する「従業員の世代交代」という4つの論点へと整理された。先行研究では明示的に扱われてこなかった事業立地という変数に注目することで、中小企業の戦略論に新たな視点をもたらした。

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