学会誌

起業家的アイデンティティからの持続的競争優位の達成


本論文では、起業家のアイデンティティが組織の戦略実践の源泉となり、持続的競争優位の達成に影響を 及ぼすプロセスとメカニズムを示した。そのために、国内の歯科用金属材料の分野で競争優位を発揮している山本貴金属地金株式会社の事例研究を行った。さらに、個人学習と組織学習の統合モデルであるOADI-SMM(Observe, Assess, Design, Implement- Shared Mental Model)を用いて分析を実施した。起業家のアイデンティティは、OADIサイクルによってメンタルモデルとして形成され、組織アイデンティテ ィに発達しつつ共有メンタルモデルに組み込まれた。それが、組織行動の源泉となり、OADI-SMMに好循環をもたらして、同社の持続的競争優位に作用した。 個人学習と組織学習の連関の視座は、アイデンティティ形成と戦略実践の結びつけに有用であった。しかし、本検討はOADI-SMMへの理論的依存度が高い単一の事例研究であることから、普遍性の面で限界がある。

↑ページTopへ