学会誌

日本ベンチャー学会誌No.28 論文一覧

VENTURE REVIEW No.28
December 2016

研究論文 /Article

中山 智浩

イノベーションの将来予測のための新製品普及モデルと4タイプの研究


イノベーション普及の研究は、プロダクトライフサイクル論・イノベーション普及過程論など各種あるが、これらは過去の現象を描写したものであったり、特定のターゲット消費者に調査を行った限定的な普及プロセスの分析であったりと、多様化する消費者を顧客と考え、環境が目まぐるしく変化するビジネスの世界では再現性が困難で実用化していくには課題がある。
本稿では、イノベーションを伴う製品・サービスを新製品とし、この売り上げ予測をサポートするモデルを新製品普及モデルと定義した。そして普及モデルの推計により普及タイプを分類し、戦略提言を客観的にするため、主に日本の新製品やサービスの限定した24事例(15社と9産業)をモデルに当てはめ分析を行った。
その結果、具体的なモデルの推計値を用いることによって、これら製品とサービスの採用者の特徴が確認でき、将来の普及予測を4タイプに分類できることが分かった。そして、分析結果は経営戦略のKPIとして、ベンチャー企業や大企業の新規事業開発において、初期マーケティング活動の投資規模や追加投資をするかどうかなどの判断、次の新製品やサービスの最適な投入時期の推測に有効な分析であることも検証できた。ベンチャーキャピタルが投資した企業の投資後のモニタリングにも有効となろう。

Key words:イノベーション普及、新製品普及モデル、新製品普及曲線、マーケティング費用の投資判断、プロダクトライフサイクル

木川 大輔

コーポレート・ベンチャーキャピタル投資は企業の目利き力を高めるか?


近年、事業会社によるVC投資、いわゆるCVC投資が学術的にも実践的にも注目を集めている。先行研究では、CVC投資が投資元の事業会社へ与えるベネフィットとして、主に投資を通じた技術やアイディアの模倣に焦点を当てた議論が行われてきた。これらの議論では、技術やアイディアの模倣が行い易い産業、すなわち特許による知的財産の保護が弱い産業においてのみ、CVC投資が事業会社のイノベーションや企業価値に影響を与えるという示唆が行われてきた。
それに対して本稿では、CVC投資が投資元の事業会社へもたらすベネフィットとして、先行研究で議論されてきたものとは異なるメカニズムに着目し検証をおこなった。検証結果からは、CVC投資を通じた情報の蓄積が、当該技術分野に対する不確実性を低減させる働きを持つという可能性が示唆された。この検証結果はまた、CVC投資を通じた大企業の企業価値向上と、ベンチャー企業との関係強化の両立が可能であることを示唆している。

Key words:コーポレート・ベンチャーキャピタル、医薬品産業、知識の獲得、吸収能力、知的財産

日本ベンチャー学会誌No.27 論文一覧

VENTURE REVIEW No.27
December 2016

研究論文 /Article

伊藤 智明/足代 訓史/山田 仁一郎/江島 由裕

企業家による事業の失敗に対する意味形成プロセスの解明


本稿は、企業家による事業の失敗に対する意味形成プロセスとその成果を、省察的対話における語り直しとスキーマの更新に着目して解明することを目的とした探索的な単一事例研究である。ベンチャーの廃業前後の研究者との対話の逐語記録を分析対象とした継時的な分析の結果、二つのことが明らかになった。第一に、事業の失敗に対する意味形成過程における、企業家の批判的省察や危機の対処行動を促す他者の役割である。第二に、事業の失敗の原因に関する自責と他責の選り分け方の変更、および、他者の視線に気づきそれへ配慮できるようになったことが、意味形成過程の成果となっていたことである。これらから示唆されることは、事業の失敗に伴う負の感情を制御するための企業家の省察的実践の働きと、企業家の判断基準の変更を前提にした理論構築の必要性である。

Key words:事業の失敗、意味形成、企業家の語り、省察、語り直し

事例研究論文 /Case Study

保田 隆明

ふるさと納税のきっかけと動機に関する調査


本論文では、ふるさと納税のデータをもとに、拠出金額に影響を与える要因と資金提供者のきっかけと動機に接近した。主に3つの発見があった。1点目は、資金提供者のふるさと納税での平均拠出金額は、自治体への訪問歴や居住歴あるいは友人知人がいるなど、何らかの関係がある人たちにおいて高くなる。2点目は、資金使途を指定しない人たちは平均拠出金額が高くなることである。3点目は、ふるさと納税先の自治体を知ったきっかけとしては、20~40代の比較的若い年代にはインターネットメディア、それ以上の年代ではテレビ・ラジオ、クチコミが効果がある。特に、調達金額や知名度がまだ低い場合は、関係者や近隣の人たちへのクチコミがより重要となる。以上から、ふるさと納税を実施する自治体が効率的に資金調達を行うには、自治体と何らかの接点のある層の開拓と育成が効果的であり、マーケティング戦略上は初期のクチコミが求められる。

Key words:ふるさと納税、上士幌町、東川町

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