日本ベンチャー学会清成忠男賞

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2010年 第5回清成忠男賞 受賞者・受賞論文

<受賞者氏名>福嶋 路 氏(東北大学大学院准教授)
<受賞論文タイトル>「資源創出理論序説」(権奇哲氏との共著)
<掲載誌名・号・年>『日本ベンチャー学会誌 Venture Review』No.14、2009年
論文

<論文要旨>

 いくつかの中小零細ベンチャー企業や地域は経営資源の不足という問題に対し、これまで独創的かつ革新的な方法で経営資源を創出しそれを活用している。このような資源創出という現象に対して、既存の資源アプローチと呼ばれる理論ではどちらかというと所有権をもつ資源を対象に、資源の用途を所与のものとし、またその活用に分析の焦点が当てられており、「資源創出」という現象にまで目を向けた研究はそれほど多くない。本研究は 20の資源創出の事例分析や既存研究などから、「資源の利用可能性」「視点の転換」「資源の組合せ」といった視点を抽出し、資源創出という現象を検討するための新たなフレームワークを提示した。最後に今後、資源創出をより明らかにしていく上で議論すべき論点を提示した。

 キーワード:資源創出、資源の利用可能性、視点の転換、資源の組合せ

<Abstract>

 The purpose of this paper is to theorize the phenomenon of resource creation and provide a framework for analyzing it. These days, we can see that some companies (and regions) with poor resource can find out unused-resources and succeed in utilizing them in unique ways. For these phenomenon, existing theories, such as resource based view (RBV) and dynamic capability, can't provide enough explanation. Firstly, we discuss limitations of existing theories on explaining resource creation. Secondly, from 20 case studies scrutinized, we categorize them into 4 types of resource creation. We found the following process of resource creation; (1) redefining resources, (2) shifting viewpoint to resources, (3)creative combination of resources. Based on the discussion and case studies, we provide a framework for explaining resource creation and some issues that need further consideration.
 
Key words:Resource Creation, Resource Availability, Change of Point of View, Resource Combination

<受賞の言葉>

 このたび、ますますその重みを増し続けているこの素晴らしい賞をいただき、大変うれしく思うと同時に、非常に恐縮しております。この論文を作成するにあたっては、多くの先生にご指導をいただきました。論文が完成でき、受賞に至ったのは指導いただいた諸先生方のおかげと、共著者の権奇哲ともども、感謝しております。
 この論文の原型となったアイデアは、10年以上前から暖めていたものです。いろいろ事情があり、論文を完成するまでには至らずにいた訳ですが、2008年、日本生産性本部の生産性助成金をいただくことになり、それに背中を押される形で一気に書き上げたという次第です。
 調査にあたっては、日本各地の現場で、地域の活性化に取り組んでいる方々に取材を行いました。大変お世話になりました。資源の乏しい地域での聞き取り取材では、「事業をスタートする時の原資は、どのように用意したのですか?」という質問をするのが常でした。これに対して「何とかなるものだ」というのがほとんどの方の答えでしたが、「何がどう何とかなるのか」が腑に落ちず、それを解き明かしたいというのが、論文作成の一つの動機でした。
 論文の第一稿はかなり混乱したものであった訳ですが、諸先生方や学会のレフェリーの皆様の有益な助言がありなんとか形にすることができました。ある意味多くの方々に「書かせていただいた」論文と思っております。今後、「序論」にとどまらず、このテーマを益々深めるよう精進していく所存ですので、どうぞ引き続きご指導のほど、よろしくお願いします。

<清成忠男氏挨拶>

 今回の受賞作となった福嶋さんの論文「資源創出理論序説」は、資源の無い地域でビジネスを起こす場合、スタートのための原資をいかに創り出すかということを理論づけようという、非常に意欲的な内容の論文であると思います。しかしながら、「資源」について、今は再考すべき時期だと思います。
 私の考えは、人間がその気になって利用すれば、どのようなものでも資源になるというものです。このような立場で考えると、「資源の無い地域」というものはありません。従って、何か地域でビジネスを起こそうとした場合、「ここには資源が無いから」という事態はあり得ません。問題は、ビジネスを起こそうと考えた人が様々な環境をいかに主体的に利用するかという点にあります。その利用の仕方、利用する行為そのものが資源である。私はそう考えています。
 以前、山形県の鳥海山を町域に有している遊佐町の町長から「自分たちの町には何も資源がありません。ビジネスを起こすにはどうしたら良いでしょう」という質問を受けました。そこで、町政要覧を見たところ、町内の標高差が2236mもあることがわかりました。日本海に面した海抜0mの場所から、鳥海山の頂上までが町域です。日本列島を垂直にしたような感じで、植生が豊富かつ多様なバリエーションがあり、これはもう大変な資源ではないかということを申し上げました。自然環境であれなんであれ、利用しようと思えばどんなものでも資源になるんです。
 現在の日本経済は、かつて活況を呈していた70年代80年代とは全く異なる状況です。グローバル化が進み財政危機からは抜け出せず、何より決定的に異なるのは、人口が減少局面に入っていることです。これだけ環境が変わっている以上、ビジネスを行う時の発想も変わって当然ではないでしょうか。このメッセージを持って、私のご挨拶に代えさせて頂きたいと思います。ありがとうございました。

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