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日本ベンチャー学会誌No.21 要旨

VENTURE REVIEW No.21
March 2013

研究論文 /Article

藤原 孝男
金融危機でのバイオベンチャーの研究開発継続

 本稿では、資源制約が大きく且つ製品の上市まで10年以上かかる創薬系バイオベンチャーが、金融危機などのシステミックショックに対して研究開発を継続するための耐性向上に向け、リアルオプションの応用可能性を検討する。
 本稿の構成として、先ず、バイオベンチャーの研究開発継続に向け投資環境の現状分析を行ない、続いて、リアルオプションの決定留保機能に関する基礎理論を検討する。
 その後、仮想的な医薬開発プロセスを前提にベンチマークとしての単独開発と共同開発とを途中で選択できるシーケンシャル・コンパウンド・スイッチングオプションによる柔軟性の価値を考察する。
 さらに、当該データを基に、市場・共同開発のリスク(ポテンシャル)に関する選択マッピングを試み、各リスクに対応したNPVの推移の3次元化や、ボラティリティとの関係のグラフ化によって、指標による意思決定の支援を目指す。

キーワード:バイオベンチャー、リアルオプション、金融危機、研究開発継続可能性

田路 則子/露木 恵美子
ハイテク・スタートアップのグローバル戦略における資源調達

ハイテク・スタートアップのグローバル展開のモデルは、知識ベース型と知識集約型に類型化することができる。本稿では、グローバル展開のタイミングと資源調達に関する命題を提示し、英国ケンブリッジ地域における4つの事例を検証した。知識ベース型は、設立初期より標的はグローバル市場であり、急速な市場浸透をはかる。コア技術、資金、人材等の資源調達のグローバル度は高くなる。一方、知識集約型は、限定的なローカル市場からスタートし、コア技術、資金、人材等の資源調達のグローバル度は高くない。しかし、利便性の高いビジネスモデルを確立することによって、次第にグローバル市場へと事業を拡大していく。

キーワード:ハイテク・スタートアップ、アントレプレナーシップ、グローバル戦略、経営資源、標的市場

橋本 良子
コーポレートベンチャリング推進組織とその推進者像

 企業は自らの成長と存続を目指し、新たな事業分野へ進出するためのイノベーション活動を積極的に推進する必要性に迫られている。イノベーション活動を成功させるための手法として、コーポレートベンチャリング(以下CVと称する)は、企業成長を目指し、企業を存続させるための一つの有用な手法である。本稿では、CV推進組織を投資スタイルから、社内ベンチャーへの投資と社外ベンチャーへの投資に分類した。さらに社内ベンチャーへの投資は、組織の底辺から湧き上がった事業アイデアを基に新規事業を立ち上げる創発性重視型と、企業の将来の柱となる事業をつくることを目的としトップの関与が強い戦略主導重視型の2つに分類される。
 本稿では、社内ベンチャーへの投資から導き出されたCV推進組織の2つのタイプ別にその推進者像について論じることにする。また、その推進者像を従来型組織のマネジャー像と比較することで、その違いを明らかにし、今後のCV推進組織における推進者任用に必要な要件を考察する

キーワード:コーポレートベンチャリング、ベンチャー、社内ベンチャー、社外ベンチャー

小澤 哲夫
現場主導の新規プロジェクトの成功要因とプロジェクト・ブランディングによる資源動員に関する研究

 本研究は、現場主導の新規プロジェクトの成功要因とプロジェクト・ブランディングによる資源動員に関する研究である。
 現在の経済環境の下では、企業はイノベーションと新規事業の創出により長期的な競争力を高めていく必要がある。現場社員は日々、顧客に接し、顧客のニーズやウォンツを熟知している。そのため、新規プロジェクトは現場社員の活用が有効であると考える。現場主導の新規プロジェクトが成功するためには、当該プロジェクトが正当化され、資源が投入される必要がある。投入資源としては、当然のことながら経営陣からの経営資源(ヒト・モノ・カネ)の投入があり、さらにプロジェクトに優秀なメンバーがプロジェクトに参画することも必要である。
 先行研究および定性分析により、成功要因となる変数を設定し、それらを定量分析で検証した。その結果、経営陣の支援と優秀メンバーのプロジェクトへの参画という資源動員がプロジェクトに影響を与えることが明確となった。さらに、そのような資源動員にはプロジェクト・ブランディングが有効であることも併せて確認された。

キーワード:社内ベンチャー、資源動員、プロジェクト・ブランディング

名取 隆
ウェブサイト活用による中小企業の技術マーケティング

 本研究は、中小企業に必要な技術マーケティングとその具体策としての潜在顧客から"探し当てられる"戦略の効果と課題について論じたものである。研究方法として最初に命題を設定し、予備的アンケート調査を行い、課題を抽出した。次にインタビュー調査によって課題の内容を具体的に探り、新たな知見を得る方法を採った。設定した命題の第一は自社技術を「見える化」して、潜在顧客から「探し当てられる」戦略の有効性である。第二は潜在顧客から「探し当てられる」手法としてのウェブサイトの最適性である。第三は模倣リスク対策と顧客の秘密情報保護の問題である。これらの命題を検討した結果、ほぼその妥当性が認められたほか、課題に関する新たな知見が得られた。それらは次の通りである。第一は競合企業による模倣リスク対策としての製造工程の秘匿の必要性である。第二はBtoB取引のため生じる自社技術の説明困難性と顧客の限定性である。第三は顧客の問題を解決する提案力及びそのための社内体制整備の必要性である。
 結論として、ウェブサイトは中小企業が潜在顧客から「探し当てられる」ためには最も効果的な手段であると同時に、克服すべき複数の課題が存在することが明らかとなった。

キーワード:中小製造業企業、技術マーケティング、技術の「見える化」、「探し当てられる」戦略、潜在顧客、ウェブサイト

日本ベンチャー学会誌No.22 要旨

VENTURE REVIEW No.22
September 2013

研究論文 /Article

高瀬 進/伊藤 智明
大学発ベンチャーか?技術移転か?

 現在、日本の大学発ベンチャーによる事業化は、成功しているとは言えない状況にある。本稿の目的は、コンピュータ黎明期における新技術の商用化に関する日米比較を通じて、日米におけるエコシステムの違いに着目し、その歴史的経緯を明らかにするものである。
 米国での大学発ベンチャーに関する最初の成功事例は、ミニ・コンピュータのディジタル・イクイップメント・コーポレーションである。同時期、日本では、通産省のイニシアティブによる電気試験所から大企業への技術移転を通じて、商用コンピュータが誕生した。
 当時、コンピュータは軍事技術の中核であった。敗戦国の日本では、大学を迂回する形で、新技術の商用化を支援するエコシステムが形成された。結果的に、新技術を商用化するときの主たる経路は、米国では、大学を主な拠点とする研究者による「大学発ベンチャー」、日本では、大企業への「技術移転」という違いが生じた。

キーワード:大学発ベンチャー、技術移転、エコシステム、トランジスタ型コンピュータ

玉置 浩伸
出身企業における破綻等の問題が起業家に与える影響に関する考察

 本稿では2001 年~2011 年に日本の株式市場に上場した新規公開企業の役員および創業者の出身企業を調査、出身企業の破綻等の問題イベントが起業の成功に影響を与えているかを検証した。
 その結果、『民事再生』、『清算』、『破産』、『私的整理』、『会社更生』など、俗に「倒産」と呼ばれるイベントが発生した企業から新規公開企業の役員が高い比率で輩出されていることが実証された。一方、『リストラ』、『合併』、『不祥事』、『持株会社移行』と役員輩出数の間には、負の相関が認められた。社齢の若い企業ほど、新規公開企業の役員を輩出する割合が高いことも確認された。
 創業者に関し、『会社更生』、『吸収合併』、『営業譲渡』、『民事再生』、『破産』という問題を経験した企業からより多くの創業者が輩出されていることも実証された。『合併』や『リストラ』を経験した企業では有意な差は認められなかった。問題企業の退出が企業の新陳代謝につながるという通説は概ね支持された。

キーワード:IPO、破綻、倒産、株式公開、出身企業

品田 誠司
災害後の起業家活動

 災害後に経済成長が発生する理由については様々な仮説が唱えられているが、本稿では被災した大都市で起業家が増加する現象とその理由を考察する。この問題について東日本大震災で被災した仙台市を手がかりに、3 つの側面からそのメカニズムを検討する。第1 に、震災に伴う経済的諸要因により震災後の仙台市で起業家が増加している側面を検討する。第2 に、災害に伴って向社会的行動による起業動機の増加が発生していることを明らかにする。
第3 に、災害に伴う起業志望者の社会的ネットワークの拡大、それに伴う社会的ネットワークの高付加価値化という側面を検討する。以上のように本稿では、経済的側面、心理的側面、社会的ネットワーク側面が複合的に作用し、災害後の大都市で起業活動が増加したと主張する。

キーワード:災害、都市、起業家、向社会的行動、社会的ネットワーク

幸田 圭一朗
VC のシンジケート投資がアンダープライシングに与える影響

 本研究では、ベンチャーキャピタル(VC)のシンジケート投資がアンダープライシングにどのような影響を及ぼしているのかということについて、実証的に明らかにする。具体的には、2001 年から2009年に日本の新興市場に上場した企業を対象として、VC によるシンジケート投資は、投資先企業の質を保証する効果があるのかどうかを検証する。
 本研究における実証分析の結果、VC によるシンジケート投資が行われた企業は、そうでない企業に比べてアンダープライシングが小さくなることが明らかになった。また、シンジケート投資の回数もアンダープライシングを小さくする可能性があるが、1 回目の組成されるシンジケーションのVC 数は影響を与えていないことが示された。以上の結果により、わが国において、VC がシンジケート投資を行うことは、投資先企業の質を保証する効果があり、それが投資家へのシグナルとなっていることが明らかになった。

キーワード:ベンチャーキャピタル、シンジケート投資、IPO、アンダープライシング

事例研究論文 /Case Study

西平 守秀/名取 隆
中小企業の医工連携に関する研究

 本研究は「どのような中小企業が医工連携に参加する傾向があるのか。」という疑問をリサーチ・クエスチョンとして中小企業の医工連携への参加要因を中心に議論したものである。研究枠組みとして定量的及び定性的の両アプローチを採った。定量的アプローチでは独自に行ったアンケートに基づき定量分析を行った。定量分析の結果、会社業歴が短く、規模(従業員)が小さく、且つ産産連携の経験を有しているという企業ほど医工連携に参加する確率が高いという特性が観測された。これは、資源ベース理論の枠組みでは十分に参加要因を捉えられないことを意味する。そこで、本研究で得られたユニークな特性の背後にある論理を探るため、定性的アプローチとして、アンケートの回答企業に対しインタビュー調査を行った。その結果、企業家的志向性が医工連携を突き動かす原動力であることが発見できた。以上から、本研究で中小企業は、医工連携に参加する場合は、他社とは異なる特別な能力は特に必要なく、むしろ能力不足などに臆することなく医工連携に積極的に参加しようとする、企業家的志向性が求められ、そしてその参加の中で連携ネットワークという「場」の中で果敢に知識を習得していく力が重要であることが示唆された。

キーワード:医工連携、中小企業、参加要因、資源ベース理論、企業家的志向性

曽根 秀一
老舗企業の継承に伴う企業家精神の発露

 本論文の目的は、存続に関して議論されてきた老舗企業研究について再考し、これらの問題点等を指摘した上で、老舗企業の継承に伴った新たな企業家精神の発露、発現メカニズムを捉える新たなアプローチを提示することにある。
 本論文では、具体的事例として、老舗宮大工企業である金剛組(578 年創業)、竹中工務店(1610 年創業)、松井建設(1586 年創業)をあげる。これまでの老舗企業研究では経営者についてほとんど着目されず、議論の対象にあげられてこなかった。このことから、いかにして組織文化に変更をくわえる承業経営者が他者との関係性のもとに事業を形成してきたのか、経年的分析を通じて着目し核心に迫っていきたい。本論文作成にあたってはインタビュー調査及び史資料調査を行った。

キーワード:老舗企業、承業経営者、企業家精神、存続要因、宮大工企業

角田 隆太郎/常川 智弘
事業システムの革新とその地域への影響

 本稿では、名古屋市で創業し、葬蔡業においてイノベーションを起こしたティア社の事業を、既存企業と比較し、分析を行う。
 サービスのイノベーションには、新たなサービスの開発によるものと、サービスの内容はこれまでと大きな違いがないが、それを新しい事業システムによって展開する「事業システムのイノベーション」がある。ティアは、葬蔡業において、「事業システムのイノベーション」を起こした企業である。
 本稿では、既存企業とティアの事業システムの違いを、財(サービス)、資本、労働、情報の取引の観点から分析を行う。
 企業家の輩出やイノベーションの生起の頻度、その受容と普及の速度については、地域間で大きな差異が存在する。日本の多くの地域では、企業家の輩出が停滞し、イノベーションが生起しにくい状況となっているが、そのような地域においても、「事業システムのイノベーション」の可能性が存在することを、ティアの事例から提示する。

キーワード:イノベーション、サービス、事業システム、取引、葬蔡業

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