日本ベンチャー学会清成忠男賞

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2015年 第10回清成忠男賞 論文部門/第3回清成忠男賞 書籍部門 受賞者

<2015年度 清成忠男賞 論文部門(本賞) 受賞者>木村 隆之 氏(首都大学東京大学院社会科学研究科)
<受賞論文タイトル>「遊休不動産を利用した「利害の結び直し」として読み解かれるソーシャル・イノベーション」
<掲載誌名・号・年>『日本ベンチャー学会誌 Venture Review』No.25、2015年


<2015年度 清成忠男賞 論文部門(奨励賞) 受賞者>藤野 義和 氏(滋賀大学大学院経済学研究科)
<受賞論文タイトル>「同族による経営の維持と終焉の論理」
<掲載誌名・号・年>『日本ベンチャー学会誌 Venture Review』No.25、2015年


<2015年度 清成忠男賞 書籍部門 受賞者>山田 仁一郎 氏(大阪市立大学大学院准教授)
<受賞書籍タイトル>「大学発ベンチャーの組織化と出口戦略」
<出版年月、出版社、ISBN>2015年3月、中央経済社、978-4-502-14281-9


※肩書は執筆当時

論文(本賞)
論文(奨励賞)

<論文部門(本賞)論文要旨>

 

 近年、まちづくり研究において、企業家概念を基軸とした「ソーシャル・イノベーション」研究による理論構築が注目されている。それら既存研究は、地域の既得権益者(ステイクホルダー)を動員するために、「利害の結び直し」の分析を行う。そこには、認知的正統性に基づく価値共有と社会的正統性に基づいたイノベーションの普及を重要視し過ぎたことで抽象レベルでの統合のみの議論となっており、再現可能性の低い記述モデルとなっている。そこで、本論文では、まちづくりとは社会企業家による資源の新結合であるという分析視座に立ち、新しい価値によるアリーナの構築と、「利害の結び直し」の起点に物質的存在を介した事業の作り込みというモデルを提唱する。 このことを経験的に実証する事例として、株式会社黒壁と株式会社北九州家守舎による地域再生事例を検討する。そこでは、「遊休不動産」という物質的存在により、ステイクホルダーの資源動員を可能にし、地域再生事業を実現させていた。

 キーワード:地域再生、ソーシャル・イノベーション、まちづくり、遊休不動産活用、利害の結び直し

<Abstract>

 In recent years, constructing the social innovation theory based on entrepreneurs' concepts related to city planning study is receiving a lot of attention. Existing studies have been conducted to analyze re-combination of interests for mobilizing local people with vested rights (stakeholders). As for existing studies, excessive attention was paid on sharing of value based on cognitive legitimacy and innovation based on social legitimacy, integration of abstract level. Therefore, it is a low reproducibility description model.
 This theoretical limitation can be solved by building the arena by a new value, arranging physical entities and creating businesses based on a concept of Re-combination of interests. To prove this empirically, regional regeneration carried out by KUROKABE corporation in Nagahama city and KITAKYUSHUYAMORI-SYA corporation in Kitakyushu city is examined. In this example, the physical entity, an unused real estate enabled mobilization of resources of stakeholders and realized the regional regeneration program.

 Key words: Community regeneration, Social innovation, City planning, Use of unused real estates, Re-combination of interests

<論文部門(奨励賞)論文要旨>

 

 本研究の目的は、第一に、戦略グループ研究の知見を活用し、新医薬を主とするわが国の主要企業における、1970年から2010年までの戦略変化と同族関与の変化の類似性を調査・分析する。第二に、その結果をもとに同族企業研究において見過ごされてきた分析視角を提示することにある。
 明らかとなる事は、第一に、輸入医薬品が同族的戦略志向性を支える安定的な収益源となっていた。第二に、海外企業の対日戦略強化により、収益構造の安定化をもたらした輸入戦略の選択が難しくなった。最後に、規模の大きな企業は輸入から輸出へと転換する過程で同族関与が終焉する傾向がみられた。

 キーワード:医薬品産業、移動障壁、輸入戦略グループ、同族的戦略志向性

<Abstract>

 The purpose of this study is twofold. First, it is directed to a pharmaceutical industry, to analyze the relationship of the family management and strategy using the strategy group. Second, to point out the problem awareness analysis and viewing angle that has been overlooked in the family business research based on the analysis.
 Two become clear by this study. First, the import strategy helped the management of long-term view. Secondly, the superiority of the import strategy, collapsed in the Japanese market strengthening by foreign firms. Finally, the big companies of scale tended to end the family manager in the process of conversion to export from imports.

 Key words: Pharmaceutical Industry,Mobility Barrier,Import Strategy Group, Management of a Long-Term View by Family Manager

<2015年度論文部門本賞 受賞の言葉> 木村隆之氏

 この度は、非常に栄誉ある賞をいただきありがとうございました。私は30歳ではじめて大学に入学し、そこから10年間、社会人学生として勉学に励んでまいりました。今回奨励賞を受賞された藤野さんも、同級生として共に学んだ方です。
 社会人として大学で学ぶ中で論文をひたすら書き続けましたが、なかなかいいものを書くことができませんでした。そのような私を諦めることなく指導し続けてくださった先生方はもとより、今回の論文へ貴重なコメントをしていただいたレフェリーの先生方など、まわりの多くの方の力添えでこの論文が生まれたと思っています。これを励みにして、引き続き研究活動を精力的に行っていきたいと思います。引き続き、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。本日はありがとうございました。

<2015年度論文部門奨励賞 受賞の言葉> 藤野義和氏

 今回は、このような栄誉ある賞をいただきましてありがとうございます。今回、この論文を作成するにあたり多くの先生方にご指導、ご鞭撻をいただきました。先生方のご指導がなければ、このような賞はいただけなかったと思っております。また、論文投稿後の査読プロセスにおいて、お世話になったレフェリーの先生方にも大変有意義なコメントをいただきありがとうございました。今後も研究を続けていきたいと思いますので、先生方のご指導、ご鞭撻をよろしくお願い申し上げます。今回はありがとうございました。

<2015年度書籍部門 受賞の言葉> 山田仁一郎氏

 この度は大変名誉ある賞をいただくことになりまして、審査委員会の先生方をはじめ学会の関係者の方々に深く御礼申し上げます。私は、小樽商科大学の近郊にある高校の出身でして、この辺りをほっつき歩くような不出来な学生だったのですが、それがこういう合縁奇縁の巡り合わせになりました。研究とは非常に不思議なもので、この研究テーマも自分の意思からというよりは、人生の出来事がいくつか重なって後押しとなり、結果としてこういう書籍の形にまとめさせていただき、大変ありがたいことだなと思っております。
 人によっては、おそらく一人でこつこつ勉強を続けて、それが優れた研究成果になるという方もいらっしゃると思いますが、私の場合、特に日本ベンチャー学会から発表の機会をたくさんいただき、その場でいろいろな先生方や先輩、後輩や共同研究者にたくさんのコメントを頂戴し、ときには行政や経営者の方々から叱責を受けるような場面を経験しながら、未熟者が何とかここまで歩みを進めることができたなという気持ちです。
 私がこれから研究に集中できる時間はそれほど長くないという自覚を持ちながら、このような賞という祝福、重い期待を引き受けるような研究にもっと取り組みたいと思っております。今晩からまた日夜研究に精進したいと思いますので、これからも変わらぬご指導をよろしくお願いいたします。この度は本当にありがとうございました。

<清成忠男賞総評> 清成忠男賞審査委員会委員長 平尾光司氏

 受賞された皆様、おめでとうございます。清成忠男賞は第10回という一つの節目になりましたが、その節目にあたって、論文部門、書籍部門とも、賞にふさわしい内容の論文が選ばれたと思っております。審査委員会としましては、5月から7月にかけて推薦図書、推薦論文の検討をいたしまして、7月24日に最終選考委員会で決定いたしました。今回、論文部門は7編あり、非常に内容のいい論文があり、実は大賞と奨励賞の間は審査委員会の評価ポイントでいくと1点差という極めて接近したレベルとなりました。そういう意味で、今年10年目で、非常に高いレベルの論文が対象作品として選ばれたということです。
 コメントを申し上げますと、大賞の木村さんの「遊休不動産を利用した「利害の結び直し」として読み解かれるソーシャル・イノベーション」を一言でいいますと、現在、日本の地方再生、村おこし、まちおこしで大きな課題になっているのは、いかに地域にある不動産資源を活用し、ソーシャル・イノベーションのプラットフォームを作るかというしかけづくり、仕組みづくりです。それについて今回の木村さんの論文は、具体的な地域のケーススタディを踏まえ、どのようにして遊休不動産というものを使って、地域のステークホルダーの利害を調整してプラットフォームを作るかという、これまでのベンチャー学会にはなかった視点の研究をされました。同時に、今の地方再生にとって大きな問題である遊休不動産の利用につながり、理論的にも整備され、ケーススタディも豊富な非常にいい論文だったと思います。
 それから、奨励部門で受賞された藤野さんの「同族による経営の維持と終焉の論理」は、日本の医薬品産業は国際競争力の低位にある背景としての経営システムの在り方を取り上げています。日本の医薬品産業が同族経営としてスタートし、それが輸入薬品との競争から輸出産業に展開という中で、同族経営からどのように脱皮転換していくのか、経営組織をイノベーションしていったのかという歴史的過程を明らかにしていきます。先行研究を踏まえて実証研究・実証調査もされ、非常にいい論文だということで、奨励賞に採用させていただきました。
 書籍部門については、山田仁一郎さんの「大学発ベンチャーの組織化と出口戦略」。今日大会でも地域オープン・イノベーションにおいて、中核になるのは大学であるというご意見もありました。経営者の流動性が低い日本社会で大学研究者であるために欠けている経営能力・マネジメント能力をどのようにカバーし、大学発ベンチャーとしてビジネスの専門家とアカデミックの研究者とのコラボレーションを組織化するか。それによって次の成長戦略、出口戦略を展開していくかが大きな課題であります。その意味で本書は非常にタイムリーなケーススタディと先行研究、海外事例など、大変豊富な内容を持った著書であり、審査委員会全員によって推薦されたということです。以上が受賞作品についてのコメントです。
 先程、清成忠男賞が第10回の節目と申しました。私も第1回目から委員を務めさせていただいており、3年前からは委員長を務めさせていただきましたが、今回をもって退任させていただきます。この期間、次期委員長に就任される高橋副委員長をはじめ、審査委員会の7人の先生方からご協力いただいたことに御礼を申し上げたいと思います。
 最近、日本を代表する経済学者の青木昌彦先生が亡くなられました。偲ぶ会に参加しましたところ、青木先生が生前に自分のアカデミックベンチャーの歴史というレジュメを書いておられ、自分の経済学理論は経済学研究におけるベンチャーだという意識を常に持ってやってきたということが、その中に記されておりました。そういう意味で、これからまさにベンチャー学会がベンチャー理論のイノベーション、ベンチャーの担い手だというアカデミックな団体である、あるいは実践団体であるという期待を申し上げておきたいと思います。
 それから一昨日、清成忠男先生とお目にかかりましたところ、今回の大会テーマである「地域オープン・イノベーションと企業家活動」について、先生も非常に同感されておられました。今日の発表を伺っておりますと、まさに清成忠男先生の理論が展開されたのではないかという感じがしました。清成先生から皆様方によろしくということと、受賞者の方々にお祝いの言葉を伝えるようにと仰せつかってまいりましたので、お伝えしたいと思います。

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